いけばなに使われる花器の種類
いけばなにおいて、花と同じくらい大切な存在が「花器(かき)」です。どんな花器を選ぶかによって作品の印象は大きく変わり、同じ花材でもまったく違う表情を見せてくれます。ここでは、いけばなでよく使われる代表的な花器の種類を紹介します。
水盤(すいばん)
もっとも基本的で初心者にも扱いやすいのが「水盤」です。口が広く浅い器で、剣山を置いて花を固定して使います。水盤は花材を自由に配置しやすく、横に広がる「盛花(もりばな)」などの作品に向いています。形は丸型・四角型・楕円型などさまざまで、黒や白などシンプルな色は花を引き立てやすいのでおすすめです。
立て花器(たてかき)
壺や筒のように高さのある器を「立て花器」と呼びます。縦に伸びる枝物や、力強さを表現したいときに用いられることが多い花器です。口の広さによっても印象が変わり、広い口は動きのある表現に、狭い口はすっきりとした直線的な構成に向いています。
投げ入れの花器
花材を剣山で固定せず、自然に投げ入れるように生けるスタイルに用いられる花器です。筒型や籠(かご)、ガラスの花器などがよく使われます。自然な動きを活かした表現ができる一方、花材を安定させるのが難しいため、ある程度慣れてから挑戦すると良いでしょう。
特殊な花器
現代のいけばなでは、伝統的な器に限らず、さまざまな素材や形の花器が使われています。陶磁器はもちろん、ガラスや金属、木、アクリル素材なども取り入れられ、作品の個性を引き出します。草月流など自由な表現を重視する流派では、日用品やオブジェのような器を花器として用いることもあります。
花器選びのポイント
初心者の方が最初に選ぶなら、シンプルな黒や白の水盤がおすすめです。花器そのものの存在感が強すぎると、花との調和が難しくなってしまうからです。まずは花を引き立てる器を選び、慣れてきたら好みや作品のテーマに合わせて個性的な花器に挑戦するとよいでしょう。
花器と空間の調和
いけばなでは、花器も作品の一部として扱います。花だけでなく、花器の形や素材、置く場所との関係性まで考えることが大切です。たとえば、和室の床の間には落ち着いた陶磁器がよく似合いますし、現代的なリビングにはガラスや金属の花器が空間に映えるでしょう。
花器は単なる道具ではなく、作品の印象を左右する重要な要素です。基本の水盤から始め、少しずつ花器のバリエーションを広げることで、いけばなの楽しみはますます深まっていきます。