いけばなに必要な道具

いけばなを始めるときにまず気になるのが、「どんな道具をそろえればいいの?」という点です。特別なものが必要なのでは、と不安に思うかもしれませんが、基本的な道具はそれほど多くありません。最低限の道具があれば、誰でもすぐにいけばなを始めることができます。ここでは、初心者が押さえておきたい代表的な道具を紹介します。

花器(かき)

花を生けるための器です。花器にはさまざまな形や素材がありますが、大きく分けると「水盤(すいばん)」と「立て花器」の二種類が代表的です。

  • 水盤:平たくて口の広い器。盛花(もりばな)など横に広がる作品に向いています。
  • 立て花器:壺や筒のように高さのある器。枝ものや縦に伸びる作品に使われます。

初心者の方はまず水盤を一つ用意すれば十分です。シンプルな形の器はどんな花材にも合わせやすく、応用がききます。

剣山(けんざん)

剣山は、花材を固定するための道具で、底にたくさんの針が立っている台状のものです。水盤の底に置き、花の茎を針に刺して立たせます。剣山を使うことで花材の位置や角度を安定させられるため、作品の表現がぐっと広がります。サイズは大小ありますが、最初は直径7〜10cm程度のものがおすすめです。

花鋏(はなばさみ)

花材を切るための専用の鋏です。普通のはさみや園芸用の剪定ばさみでも代用できますが、花鋏は茎をつぶさずに切れるよう作られており、花が長持ちしやすいという利点があります。手に馴染む大きさと重さのものを選ぶと扱いやすいでしょう。

水差し・霧吹き

いけばなでは花を長く美しく保つため、水の管理がとても大切です。水盤に水を足すための口の細い水差し、葉や花に潤いを与えるための霧吹きを用意すると便利です。どちらも家庭用のもので十分ですが、いけばな用にデザインされたものは作業がしやすくおすすめです。

敷板や布

作品を飾るときには、花器をそのまま置くよりも敷板や布を敷いたほうが見栄えが良くなります。シンプルな木製の板や黒い布などは、作品を引き立ててくれるので初心者でも取り入れやすいアイテムです。

そのほかの補助道具

作品を持ち帰る際に使う花袋や、剣山を洗うためのブラシ、枝を曲げるときに使うワイヤーなどもありますが、最初から揃える必要はありません。いけばなを続けていく中で必要に応じて揃えていけば十分です。


いけばなを始めるのに必要なのは、花器・剣山・花鋏の三つが基本です。あとは花材を用意すれば、すぐにいけばなの世界に触れることができます。大切なのは道具の数や豪華さではなく、花を大切に扱い、自分の感性を生かして生けることです。まずは最小限の道具で気軽に始めてみましょう。